Loading…
 

スポンサーサイト

Posted by さおる。 on --.-- スポンサー広告
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

心の中に棲む場所

Posted by さおる。 on 21.2012 日常 14 comments 0 trackback
20120721111004725.jpg


今日は、朝から雨。
カサブランカを切って家にとりこもうかと、ぼんやり考えている。
夏日が続いたので、細かい雨の中で植物も、人も深く呼吸を継いでいる。

夏はこれから。



20120721104610954.jpg


父の病状が良くなくて実家に帰ったりしていた。

国道165線を降りて少し下がったところに、実家はある。
その手前に、鶴来病院はあり、無意識にうちにブロック塀に囲まれた、古い建物を目で捉えて

帰ってきたんだな、と確認していたんだと思う。

橋を渡り切ったところの病院を過ぎようとして、はっとした。
鶴来病院は跡形もなく、消えていた。

なんで?



私が生まれた時から、そこにあった古びた 病院。
生まれた時から、そこにいた、アインシュタインに似た渋谷先生。
病院の裏側に続く小道の先にあった、夫人が運営されていたヤマハ音楽教室。

理由は簡単にわかる。

ー形あるものは、すべて壊れるー

渋谷先生が去年だったか亡くなったと聞いていたし、夫人はもっと前に亡くなっている。
古い館は主を失い、役目を終えたんだ。

あるべきものが、馴染んできた風景が、一瞬で消え去ったことで、心に小さな空洞ができたようだった。
実家に辿り着き、さみしさ紛れに

お母さん、渋谷さん、無くなってたよ。寂しいね~。あんな建物もうないのに、壊すくらいなら私が買い取ったのに。
…と言うと

仕方ないんや。町でも管理できんし、もう子供さんも、帰ってくることないから。
…ってわたしに取り合わない返事が帰ってきた。


失ってから、人は気付くんだ。それがどんな意味を持っていたのかを…





季節に関係なく、いつでも薄暗くて黒光りする広い廊下の先に、診察室はあって
重い真鍮のドアノブを押し広げて室内に入ると、その当時からもうお爺さんだった白衣の先生がいた。

白いカバーを掛けた丸い椅子に座った頃に、ようやく
こっちに向き合うのだった。

先生の背後には薄い木枠の硝子窓があって、注射器が何本も並んだ
、消毒液で満たされたいくつかのバットの中に、昼下がりの光を送り込んでいた。


体操服を胸まで持ち上げた私の鼓動は、冷たい聴診器を通して先生の耳だけに届いていたのだろう。

先生はほとんど話をしない人で、私も何も話す事もなく、診察室の中は緊張感に包まれていた。




小さな窓から、名前を呼ばれて手渡されるお薬は、一包ずつ紙に包まれて、三角に折りたたまれていた。
私の目の高さ程の、小窓を覗き込むと、たくさんの茶色の瓶や、分銅計りが見えた。

笑顔で見送ってくれた看護婦さん。病院から表に出る時も、黒く光る闇を住まわせているかのような、その廊下を振り返らずにはいられなかった。



あの注射器も、硝子窓を背景にした渋谷先生も、三角薬も、たくさんの茶色の小瓶も…
鶴来病院のすべてが、今はもう、心の中にしか存在しない。

あの場所は暗くて怖かったから、光が、はっきりと感じられる場所だったんだ。

自分の鼓動や、体の持つ熱。半ズボンから伸びた傷だらけの両足が、跳ね返るように生命を歌っていた。




その裏手に続く、ヤマハ音楽教室も、毎週6年ほど通った場所だった。

レッスンの寸前に形ばかりの練習をして、教室に赴く私にとって、病院から一棟に繋がるその教室も、また
暗さと緊張を秘めた場所だった。

そこへ繋がる小道には、兎小屋があって、その辺りに生える
おおばこの葉を採って、うさぎに食べさせたり、
教室の後ろの本棚に積み上げてある、漫画本を読みながら、順番を待った。


バイエルンを膝に抱えて、わたなべまさこの、怖いストーリーの中で過ごした
あの時間。
古びたゴブラン織りのピアノカバー、その上にあった、メトロノーム。
たくさん並んだオルガン、若い女の先生に言われるまま繰り返した、同じ小節。


レッスンが終わって帰る時は、もうすっかり日が落ちていた。

カバンを抱えながら病院の横を通り過ぎる時
あの硝子窓の中から、誰かが私を見ている気がして怖かった。



怖くて、怖くて、愛おしい場所。

今は、私の心の中だけに棲む場所。


さおるさん。ひさしぶりの更新、嬉しいです。
でも、お父さまのご容体などのご心配があったのですね。
そんなことと思わず、ひたすらお留守を訪ねてみていました。
お父さまが快方に向かわれるといいのですが。
思いっきりやさしく看病してさしあげてくださいね。

鶴来醫院。なんと懐かしい佇まいだったんでしょう!
知らなくても一度も行ったことなくても懐かしさに胸が
きゅんとするような建物ですね。
ここに少女のさおるさんが、何かあれば通い、また、心の
ある種の道しるべとしてお過ごしになられてきたんですね。

ここに描写された病院の様子…
二度と帰ってこないその匂いやその光と影や空気の色…
二度と帰ってこない、懐かしい人々……

セピア色の映画のように私も束の間、時間を遡ってみたような
気がします。

時が過ぎゆき、人が流れ去っていくことって、なんと寂しいのでしょう…

さおるさん。あなたはいつまでも美しく生きてね。
その美しい胸に、この世のあらん限りの美と悲しみをしかと抱いて
生きていってちょうだい。




2012.07.22 00:04 | URL | 彼岸花さん #bKDOO.Zg [edit]
> お久しぶりです。
> 彼岸花さんが、青空のした、思いを胸に歩かれた様子や、紹介されていた、つんざくような歌のメッセージ。眩しく熱く拝見しています。
>
> 失って行くものは、知らぬ間だったり、ゆっくり、一つづつ変わっていく、朽ちていくからこそ、心にどこを占めていたのかに、気付かされたり、センチメンタルな気持ちを運んできたりするのかな。。。
>
> いきなりすべてを失った人には、郷愁の思いを持って行く場所は、ないのかもしれない。
> それは身を切る思いなんだろうなって、東北の地に思いを馳せました。
>
> 鶴来病院は、さよなら夏休みにも、出てきますし、テレビドラマにも使われたようです。
> 無くなったのは悲しいですが、まさに朽ち果てた感じもあります。
> あの場所に人が集い、笑いが涙が渦巻いて、それが静まり返り、館はセピアに染まり
> 生命を閉じました。
> 心に棲む場所。
> 少女だった私がいた場所。
>
> 大切な場所。
>
> 彼岸花さんも、たくさんの、心にだけ棲む場所をおもちでしょうね。。。
2012.07.22 11:25 | URL | さおる。 #- [edit]
『失う』ということ・・
それはもしかしたら記憶の扉を開けるための鍵なのかもしれませんね。
何気なく眺めてきたものを心に整理するためのキッカケ。
何かを失うことを重ねることで、人は人として成熟していくのですね。

また さおる。さんに 気付きをもらっちゃったなぁ・・(*´∀`*)

さおる。さん・・
ボクね、明日水族館へ行ってくるよ♪
先日ラジオ局からプレゼントしてもらったチケットを持って・・。
きっと、何かが待ってると思うんだ♪
だって、ボクが迷ってるとき・・偶然のフリして必然が遊びに来るんだもん(^^)
海の絵を描いてるわけじゃないけれど、目で見るものが全てじゃないし、
目でしか見ないわけじゃないし・・。

そしてタイミングを同じくして、さおる。さんの言葉に触れられた。
ほらね♪ 偶然なんかじゃない(^^♪

『ありがとう・・』
この想いを持って満たされてきます。

お父様のこと・・気がかりですが、
さおる。さんの持つ その愛情を持って 早く良くなることを祈っています。
2012.07.22 21:55 | URL | kaminomoribito #JyN/eAqk [edit]
いつも、暖かいメッセージを届けてくださってありがとう。

失う事、心の扉を開ける鍵。
そうですね。うしなった時に生まれて、育って行く感情もあるのですね。
形はなくて、目で見ることも触れることもできなくても、心の中に行き交って
フォルムを色を、香りを作り出して行く思い。

絵を書く時に、自分の心の中にだけに育んでいく思い。
時にはもどかしく、手を伸ばしても、捕まらない思い。

失ってしまった物への思い。
これから描き出すまだ見ぬ、一枚に絵に込める思い。

どちらも、心を泳がせて、引き寄せる同じ思いですね。

明日は悠々と泳ぐ、魚たちに囲まれて、
また、心をゆったりと泳がせてきて下さいね。

そして、あなたの絵を描いてください。
私も、私の絵を、描かなくてはと、思っています。

ありがとうございます。
2012.07.22 23:16 | URL | さおる。 #JyN/eAqk [edit]
失って初めてわかるのです、うしなったものの大切さ。それにしてもこの病院、作りも昔の物そのものであるし、字も昔の字ですね!
この病院の写真見ただけで昔の面影が蘇ってくるようです。
2012.07.24 17:57 | URL | purotoko #- [edit]
こんばんわ。また暑さがぶり返しましたね。お元気ですか?
この病院は、地名の剣から、鶴来病院と名付けられたようです。
ご子息も医者になられましたが、過疎化が進むこのとでは生業が成り立たないようです。
時代は移り変わって行くのですね。
新しくて 、夢があること、今度は、作り出せたらって思います。
2012.07.24 21:28 | URL | さおる。 #JyN/eAqk [edit]
こんにちは。
お父様、気になりますね。忙しかったでしょう。
かつて栄えた場所はこうして段々と無くなってしまうけれど、それは元の姿に戻っただけで、こうして記憶の中ではしっかりと生きているから…。
ちょっとだけさみしいけどね。

私の今のこのお店も、50年近い歳月の中で家族を囲み、しっかりとその記憶を留めているようです。
今は少し姿を変えているけど、その柱には営みが刻まれています。

2012.07.26 15:10 | URL | spoon ride #JyN/eAqk [edit]
こんばんわ。いらっしゃいませ。
古い建物、いいですね~
古い家屋に手を入れて、快適に暮らせたらいいなって、最近憧れます。

この病院も、佇まいが好きでしたが、実際にその建物を活かしていくには。手間も
労力も、知恵も、勇気も、必要なんですね。

onestoryhouseのように、命を再び与えられた建物は幸せですね。

あのぼろっちかった、(失礼)平屋をみて、いまの、人が集う場所を思い描いた、spoonさんは、心で未来図を描けるんんですね。

よみがえり。豊かさを感じます。
2012.07.27 00:00 | URL | さおる。 #JyN/eAqk [edit]
お父さんその後いかがですか?
病気の回復、お祈りしています。

実は私は、今年一杯で仕事を止めて実家に戻る事にしました。
私たちのふるさと、元気にするぞ~~~!!!
2012.07.28 23:57 | URL | おじゃま犬 #JyN/eAqk [edit]
なんとなく ブログを見ていて 決意されるのかな~って感じてましたo(^-^)o

郡上の地を愛してメタセコイアの森 の方々も活動されてますね♪

なにがができそう! 私も帰る度に緑も水もなんて豊なんだろうって再確認します。

故郷で絵を
描いたりしたいな~ って いつからか思いえがいています♪

あきひこくんが どんな暮らしを始められるか すごく楽しみです。

また九頭竜でボートで浮かんだり 自転車でそこら中 はしりまわるんだね♪

わたしたちのアキヒヨコがかえってくるね♪
2012.07.29 11:00 | URL | おじゃま犬さま♪ #- [edit]
さおるさん、こんにちは^^

お久し振りでございます。

時間は形のあるものを変えていくのですね。けれども留めたいものは
こころにあるのでしょうか。お父様の健康が続くとよいですね。
祈っております。小生は、性懲りもなくまた再開してしまいました。

暑い日が続きますが、ご自愛ください。また、訪ねてみたいと思います。

これからもよろしくお願いいたします^^
2012.07.31 15:04 | URL | すーさん #dSgqtt7g [edit]
お待ちしてました。
きっとまたもどってきてくださると思っていました。
すーさんが、ブログを閉じられてから、まわりのぶろがーさんのテンションの下がり具合…。とても感じました。
すーさんのような方が、扉を開いていてくださる事で、心の中にまたすこし広がりができるようです。
また、ご家族皆様の明日をご一緒させていただけると思うと、わくわくします。
夏の最中。
さあ。どんな足跡を残してあるきましょうか。

すーさんの描かれる軌跡。楽しみにしています
2012.08.03 08:38 | URL | さおる。 #JyN/eAqk [edit]
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2012.08.03 17:14 | | # [edit]
迫ってきましたね。産みの苦しみですね。
日展に何度も入選されてるある夫人は、250号のパネルを前に
泣きながら描いていると仰っていました。

目を凝らして見つめてこられたのだもの、あとは心をだけをみつめて絵の具を
重ねてください。

頑張って。もうすぐ
生まれようとして、まっているよ。
2012.08.03 17:52 | URL | さおる。 #JyN/eAqk [edit]


  • 管理者にだけ表示を許可する

trackbackURL:http://saoru420.blog130.fc2.com/tb.php/165-ae74ca1a

プロフィール

さおる。

Author:さおる。
はじめまして。さおるです。絵を描き、詩を詠い、さまよい生きるものです。  
一人語りのような場所ですが、お付き合いよろしくお願いします。
コメントしてね♪

FC2カウンター

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

QRコード

QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。